フィリピン芸術文化センター
マニラ湾岸をドライブして以来、ずっと気になっていた建築物。湾岸沿いにポツポツと建物や椰子の木が並ぶ中、突然白い二段重ねのコンクリート箱が浮いてます。
その建物は芸術文化センター、The Cultural Center of the Philippines 、通称CCP。場所はマニラ湾岸、Pasayにあります。娘と私が通うバレエ教室で公演チケットいただいて舞台に行ってきました。
建物手前には大きな丸い池、芝の広場、国旗。道から建物に続く上り曲線スロープが池を半周囲んでいます。
側面から見ると、浮いた箱の下は反り丘形状のコンクリートリブ斜面が基壇、斜面の欠込みから長い庇が伸びています。
私のスケッチ、正面から↓
側面から↓
私たちが行った日は、建物正面から入れず、斜面にある庇部分からの出入り口でした。
浮いた箱部は石タイル貼りにライティング用デコレーション?歩道側はコンクリート斜面に芝が生えていて、ドレープのコンクリート表面が土手っぽいデザイン。日本人が想像する「広場」な感じ。彫刻や噴水のあるヨーロッパの広場ではなく、緑に土手。ドラえもんの空き地っぽさもある、どこか懐かしい感じの「広場」。
コンクリート表面のリブは彫りが深めで、縦縞の影によるコンクリート表情がイイです。
建物はLeandro Locsinが1966年設計。マカティ証券取引所やフィリピンの最高裁判所など公共建築をつくってきた建築家で、1990年にアキノ元大統領からフィリピン国民芸術家賞建築部門を授与されました。
内装は最近改修されたそうで、デザイナーはAdefuin Design Studio。空間デザインにご興味ある方はこちらからご覧ください↓blue printという、フィリピンの建築デザイン雑誌社のサイト。写真がいっぱい掲載されてます。
https://bluprint.onemega.com/designed-better-extended-ccp-theater/
側面部の庇からの出入り口は天井が低くて、裏口雰囲気たっぷり。
劇場内に入ると、外観とは打って変わって、内部は大劇場らしい気品のある空間です。コンクリート小叩き仕上げの立ち上がり階段は、仕上がりがとても綺麗です。ここのデザインですごいと思ったのは、コンクリートの大階段の存在感。コンクリートという荒々しい素材を主役にして、全体を優美なものに魅せるために、木や石・タイルなどをバランスよく使っています。手のあたる手すり上端部だけ木にしていますが、木レールを入れるために立ち上がり壁の上端部を凹にしている。写真手前の、腰の高さにある立ち上がり壁には木レールを入れておらず、階段部分だけに木を入れてます。壁は横長の細かいピースのレンガ貼り、階段部の壁は木パネル(だったかな?コンクリートの方ばかり見て覚えてない)床は赤い絨毯。
階段裏はコンクリート表しですが、角をとってなめらかな曲面に造形しています。コンクリートでできた建造物というより、象のような自然の生物のような温かみのある柔らかいモノとしている。階段裏の中央に走る一本のレールが階段を支える構造梁だと思いますが、とぐろを巻いた龍を下から見上げたような迫力があります。
階段踏み板部は仕上げをあえて三層に見せる。絨毯、石、コンクリート。絨毯や石仕上げと同等にコンクリートを仕上げとして扱っているのがわかります。
舞台後にダンサーがお客さんを見送り。
ホワイエ兼正面玄関。雨雫のようなデザインのシャンデリアと天井が印象的です。格天井(と言っていいのかな?)のパネル、角は丸めて端部を反らしています。大劇場にしてはこの玄関は床面積的には小さい方だと思いますが、吹き抜けと大階段、天井とデザイン空間の質は素晴らしかったです。ホワイエと劇場内といった大空間のなかでは柱や建物構造体を見せず、壁天井や照明・飾付けなどの上質な仕上げで夢想的な空間にしています。
劇場↓
バルコニーの裏側はコンクリート表し、劇場の壁は木の縦ルーバー。赤い緞帳の色も、ダウンライトもクラシカルな重みがあって、素敵でした。
バレエもよかったし、なにより素晴らしい建物でした。今度は建築のほうをじっくり見に行きたいです。