reiko-mom-arch’s blog

子育て、フィリピンの生活、旅行、デザイン、建築、作品などをつづります。

BGCの建物⑴ SM AURA

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BGC内で際立つデザインのSM AURAを紹介します。角地に立つ細長い建物、その奇抜な形状にはじめての方はびっくりします。

 

|全体

ストライプ模様の細長い蛇が尻尾をもち上げたような、低層の細長い建物から高層建物へと繋がった奇抜なデザイン。

全体が大きく、1枚の写真では表せないので、スケッチを描きました↓

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正面からは箱型のチューブが3x3並んだ形で、それがにょろーっと伸びて、最後尾が高層建物になります。正面から見た写真↓

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側面から↓細長い横長窓がランダムなバーコードのように入ります。
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地上部は大通りに沿ってウインドウが並び、車寄せの玄関があり、広告用モニターがあります。屋上部は緑化したオープンスペースと飲食店街、サムソンと書かれたドームはシネマホール、IMAXが入ってる、その右隣の貝殻みたいなのはチャペルらしい。

手前側がスロープ上にして、なめらかな流線型を描いてます。高層タワーには横長のバーコード窓が縦長窓にゆるやかに変化。

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|SM auraとは

SMはフィリピン最大級の大手企業で国内にショッピングモールを数十店舗展開しています。日本でいうイオンモールみたいな。SMグループいったら、富豪者番付首位を12年近く守ってるとか。不動産、金融…の中にショッピングモールも手掛ける。そのなかでSM auraは日本の新宿伊勢丹のような位置づけ、オシャレでハイソなモールです。

 

 

|敷地・プラン

場所はBGCのハイストリートの突き当たり、マーケットマーケットに隣しており、向かいにツーセレンドラというコンドミニアム団地があります。外国人や富裕層が住む地域。

敷地は建物の三面は大通りに面し、砂時計のようなくびれのある形状です。館内マップのパンフレットがなく、電子マップのみだったので、手描きで失礼↓

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館内はブランドショップやスーパーマーケット、レストランなどの商業施設や映画館、多目的ホール、オフィスが入っています。たか駐車場もあり。平面図は1階を描いたんですが、色分けはピンクがshop、水色がオープンスペース、青色がオフィスエリア。デパートに比べると圧倒的にオープンスペースが広めです。

中廊下型配置で、真ん中に通路と階段・エスカレーター。ゆるやかにカーブしてるので、遠くのショップが直線通路よりも見やすく、ブリッジや吹き抜けの位置・形状がリズミカルに各階ずらされてるので、単調ではない空間で、いい雰囲気を作っています。館内のモール内写真↓

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|造形プロセス・コンセプト

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造形プロセスはこんなイメージかと思われます↑

①細長い箱

②①をくの字に曲げる

②くの字形を3枚、横に微妙にずらしながら重ねる

③さらに3本を縦方向に重ねる。合計、縦横3×3=9本のチューブのボリュームに

④高層部の窓は縦スリット。窓のラインは曲線に沿って平行に。低層部に行くにしたがって窓・壁パネル・窓とランダムに。

⑤チューブの先端、断面切り口はコの字

できた形がこうなる↓

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モールのデザインを考えた人の気持ちで、コンセプトを説明すると(私の勝手な妄想)

「角地にランドマークとしてのユニークなデザインで、人が集まる広場のような空間がいい。1階やパブリックスペースは街から繋げたい、自然光を多く入れたい、都市の中で目立つように、とガラスカーテンウォールにしよう。でもショップ内の室内環境的には窓の面積は最小限にしたい。」

 

 

|流れる空間

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形状だけでなく、プランニングも流れるようなデザインです。交差点からのモール空間へと出入りする流れを巧みに作り出しています。建物右端は外部大階段とエスカレーターを通じて上に上がれます、真ん中はモールに入る中央エントランス。交差点に面するところは道から1〜2m上がってフリースペース、広場。よく人が溜まっています。

建物内の真ん中通路部も広いフリースペースとなっています。屋外と同様、広場的な機能が室内にも続いてます。そして屋上部の緑広場に通じています。

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|ディテール

庇(低層階)

ガラス庇には雨樋をつけない、潔さを感じます。庇先端に垂れ流しですが、このデザインの場合はいらないんじゃないかな!日本だと庇先端にまで雨樋をつけたがるけれど、フィリピンでは雨樋をあまりみません。

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庇(高層階)

場所は高層部と低層部の間、曲がり角際。斜めの窓面はどうなっているかというと…建物と一体になった庇部です。室外側は斜め平面、室内側は垂直平面となっています。高窓にご注目。ガラス窓が二重になってるの分かります???
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ガラスのカーテンウォール

ディテールで不思議な点が…ガラスのカーテンウォール、おそらくシーリングで止めてるだけなのでは!?止水性や地震時の挙動などが心配です。南国は紫外線などで劣化が早そうだけど、シーリング切れたら、、、どうするんだろう。水切り金物はもちろん、窓枠や押さえ金物が見当たりません。ミステリーディテールです。

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|LEED

車寄せにLEEDプレートがあります。LEEDゴールドを取得、つまりは環境に優しい、らしい。ガラスの熱反射フィルム(ガラスが黒く見えるのがたぶん遮熱シートフィルム)

や自然採光、緑の広場とか、ポイントが高そうです。ゴールドは4段階中の評価2番目です。

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|感想

SM auraの空間全体は、大胆。それでいて流れる形状となめらかな移動が考えられた空間で、わたし個人的に好きなデザインです。ついつい買い物に気を取られてしまいますが、ふとした時にモール内を移動する空間体験もぜひ味わってください。