reiko-mom-arch’s blog

子育て、フィリピンの生活、旅行、デザイン、建築、作品などをつづります。

フィリピンがわかる本(1)〜炎熱商人

フィリピンで働くなら絶対に読むべき本です。

 

70年代の日本とフィリピンを舞台に、商社木材の国際間ビジネスに情熱を燃やす男たちの世界を描いた作品です。作中には第二次世界大戦下のフィリピンも描かれています。日本本社とフィリピン現地での板ばさみに悩むビジネスマンの物語と、戦時中のフィリピンに駐在した日本軍のストーリーがパラレルに進みます。

 

戦時下、日本・フィリピン人ハーフの少年が日本軍憲兵大尉と出会います。大尉がフィリピン現地の人々、在住する日本人を尊重し、共存しようとする後ろ姿をみて、少年も隊長を尊敬し、日本に誇りを抱き、辛いことをも乗り越えていく。

一方、70年代、材木屋から商社木材部のマニラ支店に出向する青年は、所長に心酔する。所長は、フィリピン現地でローカルスタッフだけでなく取引相手にも思いやりと公平なビジネスをと奮闘する。戦時中に大尉と同行した少年は、成長し、所長の元で働く。所長と大尉の姿を重ね合わせる。

日比共存の理念を抱いて付き合えば万事うまくいく、というわけにはいかない。誠実な心で向き合おうとするほど、過酷な現実が待ち受ける。しかし、想いは伝わり、誰かの心の中で理想や理念は生き続ける。

泥臭い人間ストーリーに、私、見事に飲み込まれました。

 

 

この本は、木材についても勉強になります。

〜ラワンはおなじフィリッピン産でも、南のミンダナオ産の品質がよくて、北のルソン島の品質がわるい、〜台風に見舞われるルソンのラワンは、台風のおかげで、幹がねじれたり、材質が固くなったりするが、台風に縁のないミンダナオのラワンは、幹がまっすぐだし、材質も柔らかい。〜

 

同じフィリピン産のラワン材といっても、島によって色も品質も全然違うんです。ルソンでは赤ラワン、ミンダナオは白ラワン。ミンダナオの白ラワン材の特徴については、下記のように記しています。

 

〜ほとんど四季がなくて気温の変化に会わぬ南洋材は、国産材に見られる弓のマトのような、年輪の島目が木口に浮きでていない。〜輪切りにしたバナナの切り口のように、いかにも柔らかそうな感じを与えている。〜

 

一方、赤ラワンを「赤き、生命の樹」と表現し、固くて温かみがあるゆえに、イギリス・イタリアなどの欧州では家具に好まれています。

 

日本は70年代の高度経済成長期に伴った建築ラッシュで、住宅のみならず、ビルが次々と建ちあげられる時代。コンクリートの需要が急増し、コンクリートパネル(いわゆるコンパネ)の製造も急ビッチでした。かつてはコンパネに国産の松材を使用していたのが、輸入材に切り換える。

(あくまで一般的に)コンパネに品質は関係ない。(でも、コンパネの木目がコンクリートに写り込むので、デザイン上は品質関係ありますよ。昨今ではコンクリートの仕上げ面に木目が付いていたり、荒い仕上げになっているほうが、木のあたたかみや自然な風合いが表現できるので、好まれています。)基礎工事部分などの目に見えない場所や大量生産の建物では、安く済ませることが大事なので、小説の中ではコンパネの材料として赤ラワンに目をつけるのです。当時、大手日本商社は白ラワン材を輸入していました。

 

フィリピンと木材に興味がある方にも、おすすめの本です✨

 

炎熱商人(上)

炎熱商人(上)

 
炎熱商人(下)

炎熱商人(下)