フィリピンで訪れるべき場所(1)〜Tahanan Bistro in Antipolo(2)
レストラン紹介の続き、建物編。
門扉をくぐると、ガラス天井で覆われた細長い玄関通路に入ります。光と青空、白い壁と木造空間、目の前には眺めの良い庭園。奥には広大な景観を見渡せる大開口のレストラン。楽園に踏み込んだかのような心地になります。
ここは靴を脱いであがるお店。オーナー、土足禁止にして大正解です!お客は、足からは木のぬくもりを、目からは大きな窓の外にパノラミックに広がる景色を味わえます。靴を脱ぐという行為は、お寺や料亭・旅館に入る前の儀礼をするように、これから特別な空間に入るんだという気持ちになって興奮が増します。ここは床もきれいに掃除されてるので、ぜひ素足で味わってください☆
内部は小屋裏表しに、アシで編込まれた高い天井。軒の出が深く、緑と川に囲まれた庭、風通しの良い開放的な大空間で、クーラーがなくても過ごせます。
敷地内は林と小川が流れ、日本庭園のように美しい庭が広がっています。建物は3棟が雁行して配置され、棟間を短い渡廊下、温室のようにガラス天井と大開口の窓に囲まれた細長い通路でつながっています。渡廊下からは坪庭のような小さな池庭があり、鯉が悠々と泳いでいます。
レストランルームに続いて、2つ目の棟は、キッチンと広いテラス席。私たち家族はパーゴラの下で食事しました。建物の3つの棟が微妙にずらして配置されていることで、次の棟に移るたびに新たな部屋空間と景観が広がる仕組みになっています。奥へ奥へと移動する楽しさがあります。
3つ目の棟は展示ルーム。家具やアートが展示してありました。
フィリピン人家具職人兼彫刻家であったBenji Reyes氏の元自邸。ここは彼のアトリエだったのでしょうか?先ほどの2棟と比較すると光も開口も控え目。
水色の壁紙や青と黄色の欄間が可愛らしい。自然の庭と一体となった建築空間といい、窓や欄間など、和を感じさせる要素が多くて、落ち着きます。
この建物、細部にいたるまでデザイン密度が濃いんです!
上のは、床の端部断面を撮ってます。床スラブの薄さ、繊細さに驚きました!
通常、床組は梁・根太などの枠組みした上に大判の床下地板を敷き、その上に仕上げとしてフローリングを張っていきます。一般的な木造住宅では、床板が2枚以上重なっているんですが、ここはなんと無垢板材1枚そのものを梁に載せています!
階段の降り口なんですが、手スリをみてください。板塀でみかけたような、曲面うねうね。手摺子(手摺バーを支持する脚)は、造形的。まるでキリンの首から下を模ったような有機的なデザインです。柱面の凹凸は、自然によって、表面をえぐられたり丸く削られたかのよう。私は同じ大きさ・形に統一されたカクカクした角材も好きですが、素朴な形に触れるとホッとします。柱一本にしても、それぞれ本来の木そのものであるかのように表情が異なり、手仕事による情熱が伝わります。
扉。マリリンモンローの曲線美のように美しいカーブを描いた板を組み合わせ、引き手が扉面と一体となっています。引き手部は一枚の板を削り出したのかな?黒の鋲どめが可愛らしいです。
日本木造建築様式のデザインが見受けられます。
https://www.nytimes.com/2013/04/19/greathomesanddestinations/19iht-rephil19.html
ニューヨークタイムズに住宅紹介の記事が載ってました。
この住宅は、198年から5年間かけて、Reyes氏が独学で建築を学び、設計し、自らの手で作り上げたものだそうで、敷地面積約7000平米、床面積500平米。
建材は、解体された建物や廃業された倉庫のストックなどから再利用できる木材を、彼が30年間かけてかき集めたものだそうです。たとえば、天井の小屋裏トラス組は、古い橋に使用されたトラスそのもので、木材はYakalというフィリピン産マホガニー。キッチンカウンターは枕木の再利用。家具や他の場所には、世界で伐採禁止されている希少な木材を集めて作っているそうです。家具編で一部紹介します。
再生できる素材を彼自身の手で加工して、たった5年で完成させたと言うのだから、うーーん、すごすぎる。
壁、ドア、床、階段、すべての木には1本も金釘を打たずに組み立てた、唯一使った釘は屋根瓦を留めるだけだとか。
ディテールが多すぎて、書ききれません!そして全ては見きれませんでした!
もう一度じっくりと味わいに、訪れたいです。